釜炒り茶の製造工程
収穫後の新緑若葉を蒸気で蒸し、殺青・酸化止めをする。蒸し時間は茶種や葉質に依るが、一般的には普通蒸しは20~40秒間、深蒸しは40~120秒間をとる。蒸し時間が長くなればなるほど、茶葉が細かくなり、崩れやすくなる。滋味も濃くのあるまろやかな味わいになるが、香りは浅蒸しの方が発揚される。蒸熱殺青方式は日本特有のもの。次に茶葉を冷却する。
釜炒り茶とは、釜で炒って酸化酵素を止めてつくられる茶のこと。中国から日本に伝来した本来の製法と言われ、製造は九州の佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県に集中している。蒸し製茶の場合は、蒸して酸化酵素を止めてつくられる。勾玉状の形状をし、渋みが少なく、香ばしい釜香(かまか)とスッキリとした味が特徴。玉緑茶とも呼ばれるが、玉緑茶には蒸し製のものと釜炒り製のものがあり、釜炒り茶は、厳密には釜炒り製玉緑茶と呼ばれることがある。
炒り葉
摘んできた新鮮な生葉をやや萎凋させてから、直火で熱くなった鉄製の釜に入れ殺青を行う。釜の温度は約300℃。茶葉の様子を見ながら炒る時間はだいたい2~3分ほど。この工程で釜炒り茶特有の香りが生み出される。
揉捻
煎茶の製造に使用される揉捻機と同一構造の機械で上から茶葉に圧力をかけて揉み、茶葉含有水分の均一化を図るとともに、成分を出やすくさせる。
中揉
茶葉を揉みながらしっかり乾燥させていく。この過程で、釜炒り茶の特徴と言われる丸みを帯びた勾玉(まがたま)状の形状ができる。
水乾(すいかん)
水乾機は鉄製のドラム管で、直火で加熱することで、直接にドラムの内面に触れる茶葉に熱伝導する機械である。その加熱方法は「顕熱(けんねつ)」と言われる直接的な遠赤外線の熱伝導方式である。茶葉が直接に加熱体に触れることによって釜炒り茶特有の「釜香」が発揚されるので、釜炒り茶の製造に適している機械である。
生産者によって釜炒り茶の製造ラインが異なるため、独自の組み替えで製造機械が選ばれていることが一般的。そのため、一貫して言うことはできないが、多くの工場では、水乾機で茶葉を直火で乾燥し、釜炒り茶の特徴を出してから、時間短縮のため下記の再乾機を用いることもある。大型工場で大量生産をする場所では水乾工程が省かれ再乾機のみ使用される場合もある。
再乾(さいかん)
再乾機は中揉機の外観とほぼ同様で、内面も類似している。外側は薄い鉄製だが、内側は竹が貼ってある。中揉機との違いは中に茶葉を攪拌するヘラがなく、水乾機と比べてその機能はただ熱風で茶葉の乾燥を進める目的のみである。順次茶葉の水分を取り除き所望の乾燥状態にする。熱源はガスの熱風で「潜熱(せんねつ)」と言われる間接的な赤外線の熱伝導方式である。
製造効率を向上させるために煎茶の製造に使用される機械を導入すると乾燥に必要な時間は短縮される。しかし、煎茶の製造機械は主に熱風を使用するため釜炒り茶特有の釜香は得られない。前工程の水乾機は直火の乾燥も可能なため釜炒り茶の製造に適している。
締め炒り
半球上の傾斜させた丸鍋(鉄釜)で茶葉を加熱体と接触させることによって乾燥させながら、自動攪拌ヘラ(炒手)で茶葉を動かし、接触を均等にし、玉のような球状の形状に成形する。
乾燥
品質安定と茶を長持ちさせるために、全行程終了後、お茶の含有水分量を5%ほどに下げるために乾燥する。
荒茶の完成

ベルギー人茶人です。武家茶道の一派の遠州流茶道の師範として、日本のお茶文化を伝授。日本茶インストラクターとして自然で香高い最高級の日本茶を世界に伝えている。