和紅茶の香気を発揚する工程について
紅茶を製造する際に香気を発揚する工程が二通りある。「萎凋工程」と「発酵工程」である。基本的な紅茶の製造工程では両工程が行われるが、品種・製茶期・産地(圃場)などの条件によって、どの工程で良い香気が得られるかが異なる。これを見極めることが製造者の腕の見せ所だが、大まかなその傾向を下に紹介する。
「萎凋工程」で良い香気が期待できる条件。
- 中国系品種・一番茶期に造るもの。
- 日照時間が短い・標高が高い・冷涼な産地などのもの。
- 節間(せっかん)が短く葉が小さくなるような芽。
比較的に小さい茶葉で、日照時間が短いため、苦味成分の含有量が少ない。萎凋工程でこのような「繊細」な葉の香気を十分に発揮させ、おいしいお茶に仕上げる。この場合は、「萎凋長・発酵浅」という製造体制をとる。
「発酵工程」で良い香気が期待できる条件。
- アッサム系品種・二番茶期に造るもの。
- 日照量が豊富・温暖な産地。
- 節間が長く葉が大きくなるような芽。
日照時間が多くなると茶葉内のカテキンの含有量が増加し、苦くなる原因となる。また、大きい茶葉は成熟の勢いが良いので、「丈夫」な葉になる。これらの茶葉をしっかりと発酵させることでより良い香気が得られると考えられている。この場合は、「萎凋浅・発酵強」という製造体制をとる。
日本で作る紅茶の香気の発揚について
同一品種で産地が異なると、萎凋・発行それぞれの工程でベストな香気の発揚の仕方を見極める必要がある。同一品種でもかなりの違いが生じる見込みである。
日本という風土は比較的に冷涼な産地が多いので、頑丈なアッサム系品種でも、寒さに耐えるため、葉が小さくなり節間が狭くなる現象が起こる。また、産地の多くは標高が高く冷涼であるので、日本で紅茶を製造する際、萎凋段階で中心的に香気を発揚する作り方が向いていると考えられる。
そのため、和紅茶を作る際、「萎凋長・発酵浅」という製造体制が多く用いれられ、発酵度合いが薄めな香り高い、ライトな紅茶に仕上がっていることが日本の紅茶の一般的なイメージになる。
茶株の樹齢と香気の関係について
茶株の樹齢によって、香りの出方が異なる傾向がある。茶樹の樹齢が若いとインパクト系のお茶になりやすく、樹齢が高いと余韻系のお茶になりやすいと言われている。
日本の紅茶用品種について
べにほまれ
- アッサム種。
- 1942年に発明。1953年に茶農林1号として品種登録。
- 濃紅な水色。滋味が強いが、旨味がある。紅茶の標準種。
- 昔奈良で盛んに栽培されていた。
べにひかり
- 中国とアッサムと日本の在来種の交配。
- 1960年に茶農林28号として品種登録。
- 鼻に抜ける清香が素晴らしい紅茶用品種。烏龍茶にも適する。
- 日本産紅茶ならではの香りが期待できる品種。
べにふうき
- アッサムとダージリン種の交配。
- 1993年に茶農林44号として品種登録。
- 紅茶としての香気、水色、滋味の三拍子が揃った品種。烏龍茶にも適する。
- メチル化カテキンを多く含む。

ベルギー人茶人です。武家茶道の一派の遠州流茶道の師範として、日本のお茶文化を伝授。日本茶インストラクターとして自然で香高い最高級の日本茶を世界に伝えている。